教育関係の仕事をするようになって約10年。以前より世界の教育へ興味があり、調べてたり現地へ行った方のお話を聞いたりしてきました。
今回のブログは『国際バカロレア』について書きたいと思います。文部科学省が2022年度までに200校超の認定校を目指した取り組みを実施していることもあり、近年話題になっています。(2021年9月30日時点での認定校数は172校)
目次
国際バカロレアとは
国際バカロレアは、International Baccalaureateの頭文字を取って“IB”と呼ばれています。以下、IBと書きます。 IBは、教育プログラムのことを指していますが、このプログラムを拡げている非営利団体の名称も指しており、1968年にスイスのジュネーブで設立された団体です。
世界的なカリキュラム
IBを一言で説明すると「世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラム」です。2021年6月時点で、世界159の国や地域で5500校以上で提供されています。
世界共通のプログラムが生まれた背景としては、「世界中を転勤する家庭の子どもが、大学に進学できるように国際的に認められる大学入学資格を作る」という動きがあったそうです。世界的な転勤族の子どもの教育を考えて生まれたとイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。「世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラム」とは、日本でいう高校に当たる“DPプログラム”を修了した生徒が世界統一の卒業試験を受け、一定の成績を取ることで、国際バカロレア機構から大学進学のための国際バカロレアの修了資格(成績証明書)が授与されるというものです。「世界共通のパスポート」と呼ばれており、世界の大学へ進学するという可能性が拡がる素晴らしい仕組みだと思います。
IBではどのような人物を育成しようとしているのか
世界共通のプログラムで目指しているものとは何なのか。言い換えると、世界基準で求められていることとは何か、IBは次の10を追求する人材を育てようとしています。
「learner profile(学習者像)」
- Inquirers 探究する人
- Knowledgeable 知識のある人
- Thinkers 考える人
- Communicators コミュニケーションができる人
- Principled 信念のある人
- Open-minded 心を開く人
- Caring 思いやりのある人
- Risk-takers 挑戦する人
- Balanced バランスのとれた人
- Reflective 振り返りができる人
3つの教育プログラム
上記学習者を育てるために、3つの教育プログラムが設置されています。
- PYP(初等教育プログラム)
- MYP(中等教育プログラム)
- DP (ディプロマ資格プログラム)
高校2年生から学ぶ “DP” が、「世界共通のパスポート」と呼ばれるものが授与されるプログラムになります。
どんなプログラム?
国際バカロレア(IB)の教育方針は “探求型学習” と “全人的教育” で表わされ、初代事務局長のアレック・ピーターソンは次のように述べています。
「教育の目標は知識の獲得ではなく、多様な考え方で発揮できる知力を育成することである」
「知識や学びを発揮する力」など、近年改定された日本の学習指導要領の内容と重なる部分があるように思います。
では実際に、どのような教育や学習のことをいうのでしょうか。
【探求型学習】
現代では、昔よりも必要な情報にすばやくアクセスできるため、知識の詰め込みは必要なく、大切なのは得た知識をどう活用し、考え、深めていくか…という教育方針です。
それにより、 答えのない問いに自分なりの結論を出す力や、議論・作文・プレゼンなどの力がつくとされています。
IBの掲げる「探究型学習」は次のような形で進んでいきます。
教師が「私たちは何者なのか」などのテーマを設定し問いかける
↓
各自またはグループで協力してテーマについて調べたり考えたりする
↓
探求内容を発表し学び合ったり、議論したりする
↓
それぞれの探求内容を振り返り、反省点や次に生かす点を考える
公立小学校では「調べ学習」「総合的な学習の時間」として、上記のような授業を見たことがある人もいるかもしれません。
しかしそれは全体の一部であり、多くは、教科書に書かれていることを先生が黒板を使って解説し、児童生徒は静かにそれを聞いて覚える…といった形式が多いのではないでしょうか。
【全人的教育】
IBプログラムでは、「国際的な視野を持ち、人間らしさ、地球を守る責任、平和でより良い世界を築くことに貢献する人間」の育成を目指した教育を掲げています。
なぜ国際バカロレア
今回選んだ理由は、IBの教育内容に共感する部分や、EECが実践してきた、現在進行系で実践している “EssentialEducation”との共通点が多く見受けられたからです。その一部を紹介したいと思います。
IBプログラムのコア「指導のアプローチ」

IBプログラムのコア「学習のアプローチ」

DPのコア
「世界共通のパスポート」が授与される“DP”プログラムのコアとされている3要件
- 知の理論(TOK: theory of knowledge)
- 課題論文(EE: extended essay)
- 創造・活動・奉仕(CAS: creativity, activity, service)
この内、創造・活動・奉仕(CAS: creativity, activity, service)には以下のようなプログラムの説明があり、まさにEECが創業当初から実施してきている教育そのものです。特に、“経験に対する振り返りが生徒のアイデンティティーの力強い側面を形成する”という部分は、非常に共感します。EECの体験の中には、アイデンティティーを確立させる機会が凝縮しています。世界的に見ても“コア”なものであることが読み取れ、正直嬉しく誇らしいなと思いました。

世界の教育を知って自分の教育観をアップロード
日本でもオルタナティブ教育が少しずつ認知され始めている今、様々な情報を得て自分自身の教育観をさらにアップロードしていきます。今回書いたIBの内容もほんの一部でしかないため、また世界の教育に関するブログを書きたいなと思います。皆さんの教育観や価値観が拡がるキッカケになれば幸いです。
この記事を書いた人

- 有限会社エッセンシャルエデュケーションセンター EE事業部ディレクター。長崎純心大学在学中は、社会福祉の分野を専攻しながら、野外教育の指導ボランティアを経験。大学卒業後、本格的に野外教育の世界へ。1989年長崎県出身。
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