高等学校におけるキャリア教育プログラムとは? | Essential Education Center

高等学校におけるキャリア教育プログラムとは?

キャリア教育がめざすところ

「キャリア教育」という言葉を冠したものが、教育の現場に溢れ返っていますが、職業体験、進路指導という狭義の「キャリア教育」が多く見られます。

本来「キャリア教育」とは、子ども・若者がキャリアを形成していくために必要な能力・態度の育成を目標とする教育的働きかけの総称です。

「キャリア(career)」という言葉のイメージは、仕事、職業と直結しますが、生涯、人生という意味も包括します。生涯、人生といった意味を包括するとすれば、扱う素材も、自分自身の個性や特性というパーソナルなこと、自分を取り巻く人間関係、地域社会や国、世界の課題などなど広いものになります。

AI(人工知能)の発達に伴い、日本の社会は目まぐるしく変化しています。子どもだけでなく、大人でさえもこの先の日本の未来を予測するのは難しいでしょう。そんな「先行きの不透明な社会に対応できるように、教育面で働きかけていこう」というのがキャリア教育です。

いろいろな情報に触れれば触れるほど「キャリア教育」とは、とらえどころのない、難しいものだと考えていませんか?

高校生に「先行きの不透明な社会」をどう捉えるか?を尋ねたことがあります。その答えに「不安感」などネガティブなワードはほとんど出てきませんでした。

不透明、予測不可能、どうなるかわからない、答えがない未来を「可能性がある」「ワクワクする」とポジティブに捉えてる子どもたちがほとんどでした。(一方で、現実を知ろうとしない「無関心」現実を知らない「無知」がその背景にあるのかもしれないな?と感じました。)

「キャリア教育」で、もっともっといろいろな取組がなされるべきです。そこで忘れてはならないのはキャリア教育は、

  • 予め用意された「絶対解」がないということ。それぞれの「納得解」が重要であること。
  • 常にリアリティを伴うものであること。表面的、形式的な結果を求めず「本質的」な取り組みであること。
  • 常に地域社会、国、世界などリアルで「社会的」な視点を取り入れること。
  • そして常に「自分らしさ」の追求を怠らないこと。自分を軸に考える(考えさせる)こと。

多くの高校生と学校、先生とは違う軸で関わってきた者として、自分らしく生きる、自分が生きる社会を自分たちで創造するために「キャリア教育」が行われることを願っています。

キャリア教育の新しい視点「セルフデザイン」については、こちら

高校生のためのキャリア教育とは?

キャリア教育は、子ども・若者がキャリアを形成していくために必要な能力や態度の育成を目標とする教育的働きかけのことです。

一人ひとりが段階を追って発達していくことから、生徒が学校、家庭、地域で「学ぶこと」や「働くこと」に意欲的に取り組み、「生きること」を実感できるよう、意図的、継続的に学習や活動を展開するところにその特質があります。このため、キャリア教育は各学校段階を通じて、家庭や地域との連携の下、体系的に推進することが大切です。

高等学校の段階は、キャリア発達の段階から見れば、自身の進路を現実的に考え、知識を深め、社会、職業への移行を準備する時期です。

この時期の主な発達課題は、自己理解を深め自己を受容できること、多様な生き方や進路・職業の理解に立ち、選択基準ともなるべき勤労観、職業観を発達させること、それらを基に自己の将来を設計し、進路計画を立案すること、そして、その現実的吟味を十分に行い、意欲的に試行し社会的移行の準備を行うことが重要です。

キャリア教育の必要性と意義

高校生期は、社会人になる一歩手前の時期ということもあり、自らのキャリア形成を考えなければいけません。そこで、キャリア教育では、「学ぶことの意義」「学ぶことの価値」に触れつつ、自立する際に必要となる判断力や価値観を体験活動を通して学習できるように働きかけます。

また、高校生期は自我を持ち、心身ともに成熟することで人間関係や与えられる役割が増えてくる時期でもあります。しかし、そういった成長の反面、まだストレス耐性や社会性に未熟さが見られるのも事実です。自分に自信が持てないという生徒も少なくありません。

そういった生徒達に対しては、社会人に必要な価値観や体験活動を通して精神面の補強を促しいきます。学ぶことで社会に出るための自信を得ることもできるでしょう。

具体的なキャリア教育プログラム

キャリアは勉強と違い、正解がありません。あくまで世間的に見てどうかという判断基準でしかないのです。つまり、高校生は勉強や部活動のかたわら、答えのない問題に向かって立ち向かい続けれなければいけません。

そのため高校期では、生徒をサポートするという意味で入学から高校まで系統的なキャリア教育の指導を行っていきます。

例えば、ホームルーム活動や総合の時間のみを生徒主導の時間とするのではなく、日々の授業や部活動においても教員との共通理解の基、キャリア教育に取り組んでいきます。

外国語

外国語の授業の目的は言語・文化に対する理解の深化や、主体的にコミュニケーションを取ろうとする態度の育成、適格に発信・理解できるコミュニケーション能力の伸長です。

そのための授業として、人生に共通点のあるアンネ・フランクとオードリーへップバーンを取り上げ、その生き方について生徒同士で話し合わせることが例示されてます。

国語

国語では、言語活動の充実させるとともに生きる力を養成するのがねらいです。具体的に言うと、自らの役割や価値観だけを重要視するのではなく、他者と自分との関係を紐解く思考などを育成していきます。これを実現するために、ペアワークやグループワークを授業に盛り込み「話すこと・聞くこと」を重視する実践例が挙げられています。

キャリア教育は、言語活動の充実、それを通して育成する「生きる力」と深く関わっています。 言語活動は、今回の学習指導要領の改訂で、各教科等において充実することが求められています。 国語科では、実生活で生きて働き、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けることを重視しています。

高等学校国語の教科の目標は「国語を適切に表現し的確に理解する能力を育成し、伝え合う力を高めるとともに、思考力や想像力を伸ばし、心情を豊かにし、言語感覚を磨き、言語文化に対する関心を深め、国語を尊重してその向上を図る態度を育てる。」です。

国語科の指導は、この目標を実現するために行われます。そして、この目標を実現することによって身に付く総合的な言語能力は、「人が生涯の中で様々な役割を果たす過程で,自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ね」において、重要な役割を果たすことになります。 その意味で、国語科の指導は、生徒がキャリアを形成していくために必要な能力や態度を育成するための基盤を身に付けさせることでもあるのです。

数学

「数学的活動」を数学 学習に関わる目的意識をもった主体的活動と定義されています。「数学的活動」は数学を学習す る方法としてだけではなく、数学の学習を通して身に付けるべき内容として捉えることもでき、今回の改訂で数学的活動を重視した指導が求められています。

自らの考えを明らかにすることは自己理解・自己管理能力の育成につながり、また他者に分かりやすく論理的に伝えそして議論するということは、言語活動によるコミュニケーション能力や自己表現力の育成につながり、ひいては人間関係形成能力・社会形成能力につながっていきます。

今まで、高等学校数学科ではこのような態度の育成はあまり重要視されていなかったといえます。特に、今回新たに学習内容に加わった「データの分析」や「課題学習」では議論する場面を持つことができます。「データの分析」では日常生活に関連した資料を扱い、現代社会の課題などについて考えをまとめ他者に発表したり他者と議論したりすることが考えられます。

この分野では情報処理技術を頻繁に使うことから、教科「情報」の協力も必要になります。さらに扱うデータの内容によっては「保健体育科」や「家庭科」などとの連携も視野に入れるべきであり、数学を通して学習内容の広がりも大いに期待されます。

社会

地理や歴史の知識・概念・ 技能を習得することで、社会的事象を捉えることができます。自らが国家・社会の形成者であるという視点に立って思考・判断することは、自己のキャリアの形成につながります。社会的 事象を多面的・多角的に捉える力、直面する課題を探究するための資料の収集と分析・考察、そ の過程や結果を表現する力も、キャリア育成を支える要素となります。主体的に社会に参画す る資質や能力を育成することが各科目において重視されています。

地理歴史

地理歴史では、様々な社会的事象を歴史的過程と地域的特色の角度から考察し、理解する力 を身に付けることを目指しています。国際的な相互依存が進む一方、価値観の多様化の波が押し寄せている現代社会では、諸地域相互の歴史的過程及び地域的な特色を関連付けて理解することが求められているのです。広く知識の習得とともに、社会の変化に自ら対応する能力や課題を設定し追究・解決していく力を養うことが重要になります。

公民

社会的・職業的に自立するためには、現代の社会について理解し、それに基づいて自らの生き方や社会の在り方について考察することが欠かせません。したがって、公民科の学習は高等学校のキャリア教育において、重要な役割を担っているといえるでしょう。

例えば、自らの労働や生活につながるものとして経済社会について理解を深めさせることや、主権者としての政治参加の重要性や裁判員としての司法参加の意義を考えさせ、社会の有為な 形成者としての役割と責任を自覚させることは、この社会において「生きる力」につながります。

また、具体的な雇用や労働問題、社会保障などの知識は、一人一人のキャリアを支える重要な 基礎となります。卒業後に生徒たちが生きていく社会では、非正規雇用の増加など、労働者の 職業生活を取り巻く環境が大きく変化しています。労働保護立法や社会保障制度などを、一人 一人の将来の生活に直接関わる生きたものとして伝えることが大切です。また、生徒自身が望 む働き方やワーク・ライフ・バランスを考えたり、社会全体にとってどのような雇用や社会保 障の在り方が望ましいのかについて話し合ったりすることによって、生徒のキャリア発達を促 すことができるでしょう。

理科

今日の科学や科学技術の発展はめざましく、その成果が社会の隅々にまで活用されるようになっています。このように急速な進展に伴って、その変化に対応できるよう学習内容が見直されました。

科学や科学技術の成果と日常生活や社会との関連を重視し,理科を学ぶ意義や有用性が実感できるようにするとともに、生活の中で生じる様々な課題に対応する力を育成することが求められています。

理科の学習では、実験や観察などを通して、探究する能力や態度を身に付けることが求められています。新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す現代社会では、新しい知識や情報の真偽を科学的に判断することや、筋道を立てて理解する必要があります。

生涯にわたって、主体的・創造的に生きていく上で、探究する能力や態度を身に付けることは,必要不可欠です。 環境保全の意識を持ち,安全で健康な生活を過ごすために,一人一人が自然と人間の調和のとれた生き方を考えなければいけません。その上でも,理科を学ぶ意義は大きく,一人一人のキャリアを考える際、理科で学ぶ内容は非常に大切です。

保健体育

保健体育科における学びは「実生活、実社会の中などで卒業後においても、継続的なスポーツライフを営む」・「現在及び将来の生活において、健康の保持増進のための実践力を育成する」ことができるよう指導することが肝要です。

「現在及び将来の生活を健康で活力に満ちた明るく豊かなものにする」ことは、保健体育科の究極の目標として示されています。つまり,保健体育科の目標の達成を目指した指導の充実は,キャリア教育で充実させたい力の育成にも寄与しているのです。

どう指導したら良いのか?

キャリア教育を計画的・系統的に推進していくためには、年間計画を作成することが大切です。また、計画策定において最も重要なのは、学校や生徒の現在の状況を把握し、達成可能な目標を設定する上で現状と目標との差を明確にすることです。そこで生じた課題を解決するために、各学年においていつ、何をするべきか、これを具体的に示していくのが年間計画です。

一からキャリア教育を築き時間を割くと思うと現実的に難しそうですが、今まで行ってきた様々な活動の中にキャリア教育に活かせる要素があり、キャリア教育の視点から教育活動を振り返ることで、現在の学習と実社会との繋がりを意識することができ目的をもって学ぶことができます。

「キャリア教育」では、学校内のリソースを活用するだけでなく、学外のリソースを上手く活用しましょう。教科教育で求められることは、「キャリア教育」で求めていることと親和性があります。ただし、答えがないことであったり、学び方がアクティブラーニング、PBLなど多岐にわたりることなど、教科教育の延長では対応できないところがあります。そこは学外のリソースを使うことが必要です。

まず、キャリア教育を通じて育成することが期待される基礎的・汎用的能力を構成する4つの能力フィルター(人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力)で教育活動を捉え直し、どの力の向上に役立っているか洗い出します。そこで洗い出したキャリア教育の断片をつなぎ、どの能力フィルターになるか分類し、具体的にどの学年でいつ身につけさせたい力か明確にする。最後に、実際に策定した年間計画が無理なく活用できる内容になっているか検討することが大切です。

ただ、お忙しい先生方が計画に取り組むにはかなりハードルが高いように思います。計画策定の段階から、学外のリソース(民間の教育事業者、シンクタンクなど)と連携し、その学校らしい特色のある「キャリア教育」を一緒に作っていくという視点が重要です。

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    この記事を書いた人

    鈴木 浩之(Hiroyuki,SUZUKI)
    有限会社エッセンシャルエデュケーションセンター Sales&Promotion担当マネージャー。
    大学卒業後、世界的冒険教育機関であるOBSの指導者コースJALT受講、その後、OBSインストラクターへ。OEC、国立青少年教育振興機構、市議会議員等を経て現在に至る。1971年静岡県出身。

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