【管理職・経営者必見】「管理職は罰ゲーム」の正体は、仕事量ではなかった
―データが示す、たったひとつの分かれ目―

2026.09.11

お知らせ

前回の記事では、管理職に求められるスキルを並べたうえで、そのすべてが「コミュニケーション」というひとつの土台に乗っていることをお伝えしました。

そのあと、いくつかの企業様から似た反応をいただきました。

「コミュニケーションが大事なのは分かる。ただ、そもそも管理職をやりたいという人がいない」というものです。

たしかに最近、「管理職は罰ゲーム」という言葉をよく聞くようになりました。今回の記事では、その言葉に目を向けてみようと思います。

2026年に発表されたばかりの調査を2つ手がかりにすると、この言葉の輪郭が思ったより違う形をしていることが見えてきます。

「管理職の罰ゲーム化」とは何か

【この記事の要約】 「管理職は罰ゲーム」と言われますが、現職の管理職の約6割は「続けたい」と答えています。分かれ目になっていたのは、業務量だけではありませんでした。

「管理職の罰ゲーム化」とは: 管理職に負担と責任だけが集中し、割に合わない役割になっている状態。パーソル総合研究所が2025〜2026年の人事トレンドワードに選出。

なり手は、たしかに少ない: 一般社員で管理職に「なりたい」は18.1%。否定的な層は6割超。

ところが、現職の約6割は「続けたい」: 役割そのものが嫌われているわけではない。

分かれ目は業務量だけではなかった: 継続意向は、孤独感の低い管理職で70.2%、高い管理職で40.6%。

孤立はどこで生まれるか: 上司の69.9%、部下の62.3%が相手との関わりで困っている。同じ場面を、両側が別の言葉で呼んでいる。

「管理職の罰ゲーム化」とは、管理職というポジションに負担と責任ばかりが集中し、見返りと釣り合わなくなっている状態を指す言葉です。もともとは小林祐児氏の著書『罰ゲーム化する管理職』(集英社インターナショナル・2024年)から広まり、パーソル総合研究所は2025〜2026年の人事トレンドワードのひとつにこの言葉を選んでいます。

流行語として選ばれた、という事実そのものが重要かもしれません。特定の会社の問題ではなく、多くの職場で「うちのことだ」と受け止められたということだからです。

なり手は、たしかに少ない

まず、なり手の話から。

リクルートマネジメントソリューションズが2026年2月に発表した「管理職のあり方に関する実態調査」では、一般社員に今後管理職になりたいかを尋ねています。

  • 「なりたい」「どちらかといえばなりたい」:18.1%
  • 「どちらかといえばなりたくない」:22.9%
  • 「なりたくない」:44.0%

否定的な層が6割を超えました。理由として挙がったのは、責任や業務負荷の重さ、報酬やワーク・ライフ・バランスへの不安。それに「現場で専門性を発揮していたい」という声です。

ここまでは、おそらく多くの方の実感どおりだと思います。

「マネジメント力の向上(役職者としての現状分析)」のスライドを前に、管理職向け研修で講義するエッセンシャルエデュケーションセンター代表の田中

ところが、いま管理職をしている人の約6割は「続けたい」

同じ調査には、意外な数字も並んでいます。

現在管理職である人の約6割が、「今後も管理職を続けたい」「どちらかといえば続けたい」と答えているのです。組織で管理職として働くことへの満足度も、約6割が肯定的でした。続けたい理由の最多は「やりがい」。部下の成長を支えること、組織の成果に貢献することに価値を感じている管理職は、決して少数派ではありません。

外から見ると割に合わない役割に見える。けれど、中にいる人の6割は続けたいと言っている。つまり、罰ゲーム化しているのは“管理職という役割”そのものではない可能性があります。では、何が罰ゲームなのか。

分かれ目は、業務量だけではなかった

同じ調査が、続けたい人と続けたくない人を分けている要因を分析しています。結果はこうでした。

  • 孤独感が低い管理職の継続意向:70.2%/孤独感が高い管理職:40.6%
  • 組織から支援されていると感じている管理職:65.2%/感じていない管理職:41.6%
  • 仕事への活力を感じている管理職:74.6%/感じていない管理職:48.7%

いちばん上の差に注目してください。孤独感の高低だけで、継続意向に30ポイント近い開きが出ています。調査報告書は、孤独感が低い管理職は職場に話し相手や頼れる人がいて悩みや判断を一人で抱え込まずに済んでいる、反対に孤独感が高い管理職は立場上本音を共有しにくく精神的な消耗が進みやすい、と説明しています。

業務量が多いこと自体は、たしかに負担です。実際、同じ調査でも管理職を続けたくない理由の1位は「業務負荷」でした。ただ、続けたい人と続けたくない人をこれだけ大きく分けていたのは、その負担をひとりで抱えているかどうかのほうでした。

管理職を罰ゲームたらしめているのは、役割そのものではなく、“孤独感”であると言えます。

その孤立は、日常のどこで生まれるのか

では、管理職はどこで孤立していくのか。ここでもうひとつ、2026年5月に実施された調査を見てみます。パーソルキャリアのJob総研による『2026年 上司と部下の意識調査』です。上司と部下の両方に、同じテーマで聞いているのが特徴です。

上司側は、69.9%が部下との関わりで困っていると答えました。困りごとの上位は「主体性を感じにくい」46.3%、「指示待ちが多い」45.3%。上司が部下に求めることの1位も「主体性」60.3%でした。

部下側は、62.3%が上司との関わりで困っていると答えています。困りごとの1位は「指示が曖昧」43.2%でした。

並べると、見えてくるものがあります。

  • 上司は「言ったのに動かない。主体性がない」と感じている
  • 部下は「何をどうすればいいのか分からない」と感じている

同じ場面を、両側がまったく違う言葉で呼んでいるわけです。どちらも嘘をついていません。それぞれの位置から、見えたとおりを言っています。

役割の認識にも同じズレがありました。上司が考える上司の最優先の役割は「部下の育成」66.9%。いっぽう部下が考える上司の役割の1位は「安心できる職場環境の整備」64.9%です。育てようとしている人と、安心したい人が、同じ机を挟んでいます。

このズレが積み重なると、管理職の側には「伝えても伝わらない」という感覚だけが残ります。立場的に相談する相手も少ないかもしれません。仮に相談できたとしても、次の日から使えるような具体的なアクションが手に入らないかもしれません。こうして、孤独感がじわじわと高まっていきます。

エマジェネティックス®の資料を掲示したホワイトボードの前で、参加者同士の対話をファシリテートする講師

ひとりで背負わないために、できること

負担の総量を今日から減らすのは簡単ではありません。人手不足も、法改正への対応も、管理職ひとりの工夫でどうにかなるものではないからです。

けれど、ひとりで背負っている状態のほうは、今日から動かせます。3つ挙げます。

① 「曖昧」と言われる箇所を、具体的に特定する

「指示が曖昧」と言われても、多くの管理職には心当たりがありません。当然です。自分の中では明確だからです。曖昧さは内容ではなく、受け手の特性に合わないアプローチをしているときに生まれます。

たとえば……

  • 結論から聞きたい人に、背景から話してしまう
  • 全体像がないと動けない人に、手順だけ渡す

これだけで「曖昧」になります。

② 伝えた最後に、相手の言葉で言い直してもらう

前回もお伝えした技です。「じゃあ、どう進める?」「聞いてピンとこなかった部分はない?」などと一言足すだけで、ズレをその場で可視化することができます。

ズレが起きること自体は避けられません。避けられるのは、ズレたまま数日が過ぎることのほうです。

③ 自分の傾向を、先に開示してしまう

これがいちばん効きます。「自分は結論から話すので、背景が足りないと感じたら遠慮なく聞いてほしい」。管理職の側が先に手の内を明かすと、部下は「聞いていい」と分かります。すると、確認の責任が管理職ひとりから外れます。

3つに共通しているのは、違いを扱うための共通の言葉があるかどうかです。「あの人は気難しい」「若い子は分からない」という言い方では、相手を評価しているだけで次の一手が出てきません。

「この人はゴールを先に知りたいタイプだけど、自分は根拠から入るタイプだ」と言えれば、そこからコミュニケーションの質が変わります。

そして共通の言葉がチーム全体にあれば、翻訳の作業は管理職ひとりの仕事ではなくなります。部下の側から「先に結論をもらえますか」と言えるようになる。同僚同士で「あの人にはこう伝えたほうが早いよ」と補い合えるようになる。

違いは、恐れではなく価値になります。ただしそれは、違いを共通の言葉で言い表せるようになってからの話です。

まとめ

  • 「管理職の罰ゲーム化」は、トレンドワードに選ばれるほど広く共有された実感
  • 一般社員で管理職になりたい人は18.1%。6割以上が否定的
  • いっぽうで、現職の管理職の約6割は「続けたい」。役割そのものが嫌われているわけではない
  • 続けたい人と続けたくない人を大きく分けていたのは、業務量だけではなく孤独感(低い層70.2%/高い層40.6%)
  • 孤立は、上司の「主体性がない」と部下の「指示が曖昧」というすれ違いから静かに始まる
  • 負担の総量はすぐには減らせない。ひとりで背負っている状態のほうは、今日から動かせる

よくある質問(FAQ)

Q. 結局は人手不足の問題ではないですか。

A. 半分はそのとおりです。だからこそ、人を増やさないと解けない問題と、いま手をつけられる問題を分けることをおすすめしています。すべてを人手不足のせいにすると、採用が決まるまで何も動かせなくなります。

Q. うちは管理職が数名しかいない小さな会社ですが、関係ありますか。

A. むしろ影響は大きくなります。管理職の人数が少ないほど、相談できる同じ立場の相手が社内にいないためです。今回の調査は企業規模別には見ていませんが、「孤独感」という条件で考えると、規模の小さい組織ほど厳しくなります。

Q. 部下の性格を把握するということですか。

A. 性格ではなく、思考や行動の傾向です。性格は評価につながりやすく口に出しにくいものですが、傾向は「違い」として言葉にできます。この差が、チームで共有できるかどうかを分けます。

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参考記事:【管理職・人事必見】求められるスキルは8つ。でも土台はひとつ―明日から使える、伝え方の3つの技―

【参考文献】


EEC-EG入門コースで、手元のプロファイル資料を見比べながら互いの違いを確認し合う参加者
思考特性ごとに異なる会議の進め方を4色の図で示しながら解説する講師
受け取ったばかりの自分のプロファイルを、笑顔で読み込む参加者
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投稿者プロフィール

土田陽介
土田陽介
執行役員 兼 Sales&Promotion マネージャー

大学卒業後、英語教師として自身の出身高校へ就職。その後、小学校へ異動し13年間小学校の教師を務める。勤務先の小学校でEECと出会い、一緒に子どもたちの成長に携わる。2025年5月よりEECへ。

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