組織開発、人材育成に活きる効果的なフィードバックとは?
2022.06.16
企業研修や人材育成・教育の場面において、『フィードバック』という手法が用いられることがあります。
自分を知り、他者との関係性を構築するためにも、非常に有効な手法なのですが、一歩間違えると逆効果を生んでしまうこともあります。「この伝え方で大丈夫だろうか?」「本人の成長につながっているだろうか?」と疑問に感じている方もいるかもしれません。
本質的な『フィードバック』の意味や手法を理解してこそ、『フィードバック』本来の効果が発揮されます。
EECの研修プログラムにおいても数多く取り入れられている『フィードバック』ですが、今回は考え方や効果的なやり方について書きたいと思います。
そもそも、フィードバックとは何か?
『フィードバック』とは、他者から自分の行動や自分が周りに与えている影響について教えてもらうことを言います。
企業では評価面談やプロジェクトのふりかえり、または研修などの非日常の中で行われることが多いです。また一般的には、上司から部下へ行われる(上司が部下へフィードバックをする)ことが多いと思います。これは、部下の育成・パフォーマンス向上・動機付けを狙いとしています。
ここで重要なことは「評価」として良い、悪いを決めてしまわないことです。ある行為の結果は、明確に出てきますが、その行為を、客観的な視点で捉え、アドバイスすることで、成長を促す目的があります。上司から部下、先生から生徒へのフィードバックは、どうしても「評価」の色合いが出てしまいます。
会社であれば同期、学校であれば同級生同士のフィードバックであれば自然と「評価」ということではなくなります。フィードバック自体が関係性の構築にも繋がります。
もともとフィードバックとは、「フィードバック制御」という制御工学の分野から生まれた言葉です。その直訳は「帰還」です。
目標値と実際の値を比べて、2つが一致するように改善する制御方法を意味します。「結果を見て次の改善へ繋げていく」という点では、企業内で行われているフィードバックと同じと言えるかもしれません。
フィードバックの効果
『フィードバック』を行う一番の効果に、 “自分の知らない自分を知ることができる” というものがあります。裸の王様に、「裸ですよ」と言ってあげるということですね。
自分で捉えている自分と、他者から見えている “自分” の間には、大きなギャップがあることもあります。そのギャップを把握できないまま他者やチームとコミュニケーションを取ることで、エラーや軋轢を生んでしまうこともあります。
逆に、そのギャップを正確に把握することができれば、自分や自分が関わるチームの可能性が拡がると言ってもよいでしょう。
目標に向けた行動の軌道修正
フィードバックの目的は、行動のズレを修正することにあります。例えば、部下が間違った方向に努力していたら、それを適宜指摘し、行動を改善させることが大切です。
管理職としては、チームメンバー一人ひとりが目標に向けて正しく取り組めるように軌道修正していくことで、組織全体の生産性を高めることができるでしょう。チームメンバー自身で目標を管理できるよう実行計画を基にフィードバックすること、その実行計画はチームメンバーが共有することも重要です。
それは、管理者から被管理者へのフィードバックは一方的になりがちですが、チームメンバー同士の相互フィードバックであれば相乗効果が期待できるからです。
モチベーションが高まる
フィードバックは、業務への意欲(モチベーション)を高める効果もあります。上司や先輩からの反応がないと、「放置されている」と感じる部下も多いからです。学校における先生と生徒の関係、家庭における親と子どもの関係でも言えることかもしれません。
上司が部下に、先生が生徒に対して「しっかり見ている」と伝える意味でも、定期的なフィードバックが効果的です。また、単純に感謝の言葉を送ることで、部下のやる気に火をつける効果もあります。感謝の言葉自体が、フィードバックの意味を持ちます。
スキルアップにつながる
キャリア開発、人材育成の視点でいうと、自分一人で必要な能力をすべて身につけるのは難しいものです。上司や先輩からアドバイスをもらったり、チームメンバーと相談したりすることで、初めて、気づけることもあります。
部下が困っている際に上司の助言は有意義です。フィードバックで方法論やノウハウを教えることで、相手のスキルアップも支援できるでしょう。
フィードバック、アドバイスを期待しているだけでは、自分自身の状態を伝えることはできません。自分発信で上司、先輩にアドバイスを請うたり、チームメンバーに相談したりすることが必要です。
ただ、自分自身の現時点での判断を明確にし、最大限の努力をした上での相談でないと「成長」につながるフィードバックは期待できません。あくまで自身の判断、分析、スキル、方法など、上司や先輩、チームメンバーと比較検討できるものを予め持っている事が重要です。
組織の心理的安全性の向上
定期的なフィードバックによって、上司と部下、チームメンバー同士がコミュニケーションを取る機会も増えます。それによって、お互いの信頼関係がさらに深まり、チーム全体の雰囲気が良くなる効果も期待できるでしょう。また、お互いの信頼が高まることで、エンゲージメントも自然と高まっていきます。
EECでは、組織の目に見えない強みと課題を心理的安全性、成長循環、多様性、人間関係の4つの視点で可視化する『Essentialスケール』で、定期的にチームのアセスメントをしていますが、組織のアセスメントを行うことによって、その視点をフィードバックに活かすこともできます。
フィードバックの内容
『フィードバック』には、大きく分けて2つの方向性があります。
“ポジティブフィードバック” と “ネガティブフィードバック” です。
ポジティブフィードバックとは
簡単に言うと、対象者(フィードバックをする相手)の良い行動や良い影響を伝えることです。
その人の行動や言動が、チームや組織にどの様なメリットや成果を与えているかを伝えます。
ネガティブフィードバックとは
対象者(フィードバックをする相手)の悪い行動や悪い影響を伝えることです。
ここで押さえておくべき重要な点は、その人の人間性や性格の話では無い、という部分です。
業務や目標を共にするメンバーとして、その人の行動や言動が、チーム・組織の業務や目標にネガティブな影響を与えているポイントを伝えます。
しかし、人間心理として、どうしても “ネガティブフィードバック” は、伝えづらい部分もあるかと思います。
「相手が傷つくかな、、」「怒り出したらどうしよう、、」「嫌われないかな、、」
など、フィードバックをする側にも、大きなプレッシャーがかかってきます。
フィードバックを行う前に
前述の通り、『フィードバック』は心的不安やストレスが発生する場合があります。
その結果、パフォーマンスが低下したり、相手との関係性が悪化する、などといことに繋がりかねません。本来、『フィードバック』は、相手の成長やチーム・組織の成長を願って行うものなのですが、『フィードバック』自体がストレスになっていては本末転倒です。
そのため、『フィードバック』は安易に行うのではなく、
・『フィードバック』の意味を共有する
・正しい手法で行う
ということが必要です。
慣れていない、もしくは相手との関係性が希薄な場合は、研修プログラムとして行うなど、第三者の力を借りることが有効でしょう。
フィードバックのポイント
『フィードバック』を効果的に行うポイントはいくつかあるのですが、以下重要なポイントをご紹介します。
具体的なフィードバック
対象者(フィードバックをする相手)の具体的な行動や言動についてフィードバックを行いましょう。
「なんとなく良かった!」「悪い感じがする…」「いつもそうだから…」など、曖昧にフィードバックをされても、次に繋げることができません。フィードバックされた側が、具体的な行動、場面を思い出せることが重要です。
ネガティブフィードバックから逃げない
前述の通り、“ネガティブフィードバック” は、“ポジティブフィードバック” に比べると伝えることにハードルを感じる人も少ないと思いますが、そもそもの『フィードバック』の目的を思い返して、耳の痛いこともしかっりと伝えるようにしましょう。“ネガティブフィードバック” の中にこそ、気づきや成長のヒントが隠れているものです。
フィードバックは「評価」ではないこと、「成長」を願って行われるものであることを意識して下さい。また、相手がそのフィードバックを受け入れられる状態か?例えば、別のことで落ち込んでいる、悩んでいる状態ではなかなか素直にそのフィードバックと向き合うことができません。その人との関係性も影響します。
リアルタイムにフィードバックを行う
具体的なフィードバックの項でも書きましたが、フィードバックされた側が、具体的な行動、場面を思い出せることが重要です。『フィードバック』は、できる限りリアルタイムに行うのが良いでしょう。「いつもそうだから…」とか、何ヶ月も前や何年も前のことを伝えられて、記憶に残っていなかったりすれば、「それならば早く言ってほしかった」と不満に繋がることもあります。
フィードバックへの感謝を伝える
『フィードバック』は、伝える側も伝えられる側も “感謝” の気持ちを持つことが重要です。互いの成長やいチーム・組織の成長を願って『フィードバック』を実施できている事自体が大きな意味を持ちます。
フィードバックしてくれる上司、仲間がいるということ、それが実現する組織風土、風通しの良さ、向上心や成長意欲に対して…感謝を言葉にして伝えてみると良いでしょう。
フィードバックまとめ
リモートワークやオンラインコミュニケーションが増えている今だからこそ、『フィードバック』を有効に使って、関係性の構築やチームビルディングが求められていると感じます。
EECでも、『フィードバック』を取り入れたオーダメイドの人材育成・研修プログラムのご提案も可能ですので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
投稿者プロフィール
- 代表取締役
幼少期からアルペンスキーの選手として活躍。
高校卒業後、単身アメリカColorado Mountain Collegeへ留学。スキー選手として世界を転戦しながら、野外教育を学ぶ。スキー選手を引退後、弊社代表取締役に就任。
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