自己肯定感という呪縛
2019.07.29
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。前回(それぞれの今を映す-その2)、前々回(それぞれの今を映す)と、EECの青少年層の研修で使っている “自己意識調査” について、書かせていただきました。
今回は、最近よく聞く、【自己肯定感】について触れたいと思います。この【自己肯定感】という言葉ですが、なかなか厄介というのが私の印象です。
確かに【自己肯定感】は高い方が良いとは思います。一方で【自己肯定感】は高くなければならない、高めなければならない、低いことは悪という風潮は、あまり好ましくないとも思います。
自己肯定感とは?
自己肯定感は、前述の “自己意識調査” の中では、「自分を肯定的に受け入れている度合い」という項目で登場します。
日本では、10歳頃から急激に「自己肯定感」が低下してしまう傾向があると言われています。確かに、我々が続けている “自己意識調査” においても、地域、学校等による違いはあるにせよ「自分を肯定的に受け入れている度合い」の数値は低く、年齢を追うごとに徐々に低下していく傾向もみられます。
そもそも「自己肯定感」とは何なのか?
【自己肯定感】とは、自分の価値に関する感覚であり、自分が自分についてどう考え、どう感じているかによって決まる感覚です。
そのままの自分を認める、受け入れる、尊重する、自らの存在を肯定する【自己肯定感】の感覚は、「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在」だと思える状態が土台となります。「自分らしさ」の源泉とでも言えるでしょう。
【自己肯定感】は、生まれてから3,4歳までの親の子どもに対する言葉がけ、働きかけ、育て方により決定するといわれ、その後、12歳ぐらいまでに「自分はどういう人間であるか」という自己認識(能力や価値、他者との人間関係、知性、感情などをどう感じているかという自分自身のイメージ)と共に、【自己肯定感】のベースは決まってきます。また、【自己肯定感】は、高い、低いと表現されますが、自己肯定感が高いから良い、低いから悪いということではないはずです。
自己肯定感の呪縛
【自己肯定感】は人の優劣を決めるものではありませんが、【自己肯定感】が高いか、低いかが人生に与える影響は大きくなるとも言われています。しかし、中学生や高校生では手遅れなのでしょうか?また、成人は12歳ぐらいまでに決定した【自己肯定感】によって、その後の人生が決定づけらてしまうのでしょうか?ここが、【自己肯定感】の呪縛と感じるところです。
皆さんはどんな体験をしたら「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在だ」と思えますか?
幼い時期は、やはり親や周囲の大人に受け入れられる、認められるという経験が重要だと思います。しかし、受験、競技スポーツなど、いわゆる競争が低年齢化していくに従って、他者と比較する、されることが必然的に多くなってしまうのではないでしょうか?
もし、何かの機会に他の子どもと比べて、ある面で劣っていると判断されてしまうと、いろいろな場面で否定的な関わりが増えてしまうことはないでしょうか?そんな経験の繰り返しが、【自己肯定感】に影響を与えるのは想像ができます。
大人になってから、いろいろな経験の中で、成功、失敗を繰り返すはずです。その経験をどう消化するかによって、【自己肯定感】が変化すると思います。
自己肯定感と人間関係
【自己肯定感】が高いと、他者や周りを尊重できる余裕が生まれると思います。すると結果的に他者からも尊重され、お互いに尊重し合える人間関係が築けるのではないでしょうか。
しかし、【自己肯定感】が比較的低い側から、高い側を見てみると、羨ましかったり、優位に感じたり、相対的に自分が劣っていると感じたり、時には高い【自己肯定感】を背景にした言動が「鼻につく」ことすらあります。
自分は尊重するが、周りは尊重しない、自分の価値は認めるが、相手の価値は認められない、自分さえよければいいと考える人は【自己肯定感】が高いとは言えないと思いますが、周囲から【自己肯定感】が高いと見える、また自分は【自己肯定感】が高いと自覚している人の中に、そんなタイプが混在しているように思います。
逆に【自己肯定感】の高い側から、低い側を見てみると、自信なさげに見える、消極的、何で自分の意見を主張しないのか…などなど、煮え切らない感じ、じれったいといった印象で見えてしまうことも多いと思います。しかし、【自己肯定感】が低くても、現状の自分には満足していない、内なる闘志を秘めている、挫折から立ち直る途上にいるチャレンジャーなどが含まれるように思います。
最後に…
このブログ、実はある中学校の教育支援の現場で仕上げています。そこに同行されている先生の言葉に、【自己肯定感】に関するキーワードが見つかったので、それをこのブログのまとめとして引用させていただきます。
それは「自分なりの成功体験」という言葉です。思った通りの結果が出ていなくても、結果に対して貢献できなくても、些細なことでも、一つでも二つでも「これはできた」という実感、これまでできなかったけれど「挑戦できた」という自負をどれだけ重ねられるかが重要だということです。
他者から与えられたもの、評価されるものではなく、内から沸き起こる納得感を自覚できれば、「自分は大切な存在だ」「自分はかけがえのない存在」だと思えるのではないでしょうか?そこに目を向ける、気づくきっかけを私たちはいろいろな現場で提供しているのだと再確認しました。
親や先生、私たちのような教育に携わる者が、まず相手をリスペクトし、【自己肯定感】の呪縛から解き放たれることが重要であるように思います。
投稿者プロフィール
- Sales&Promotion担当マネージャー
大学卒業後、世界的冒険教育機関であるOBSの指導者コースJALT受講、その後、OBSインストラクターへ。
EECの前身であるOECに参画、国立青少年教育振興機構「中央青少年交流の家」、市議会議員を経て現在に至る。
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