コミュニケーション能力を高めるには
2022.07.11
学校、会社、地域など社会で生きていくためには、自分との関係の濃淡にかかわらず、周囲の人たちとコミュニケーションを取ることが必要です。 様々な場面において、どのような人間関係を作るか、またその関係の良し悪しは、コミュニケーションによって決まってくると言っても過言ではありません。
コミュニケーション能力は、他人との人間関係を良好に築き、自身の人生をより良くしていくために必要不可欠なものです。また、仕事でパフォーマンスを出す、自分の能力を発揮するうえでも欠かせない能力です。
コミュニケーションの要素
コミュニケーションには、大きく2つの手段「言語」「非言語」があります。
言語
言語は、言葉そのものです。頭の中にある「考え」「価値観」「知識」といった情報を言葉に変換し、発言、文章などにして、相互にやりとりをしています。点字や手話、マークやアイコンも言語に含まれます。
非言語
視線や表情、声のトーン、身振り手振り、立ち居振る舞いなどです。「感情」「思い」など、言語の裏に隠された(隠れた)「本当の思い」などをくみ取るうえで重要になるのが、こうした非言語の領域です。
人と人がコミュニケーションを図る際、実は「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」という割合で影響を与えていることを示した心理学上の法則です。「メラビアンの法則」という、非言語コミュニケーションに関する実験により得られた知見です。
この研究では、相手の感情を読み取る際に、大部分の情報を非言語領域(視覚、聴覚)から得ていることが明らかになりました。現在の常にマスクをつけている状態でのコミュニケーションは、多くの情報を得ている非言語領域に制限がかかった状態と言えます。
コミュニケーション能力とは
コミュニケーションは言語、非言語という2つの手段があり、「相互作用」であることをふまえると、コミュニケーション能力は、言語の発信、受信。非言語の発信、受信の4つに分解することができます。
自分の言いたいことを「伝える力」
相手に分かりやすく、そして自分の言いたいことを正確に伝える力のことです。発言と文章で違いはありますが、言葉選び、組み立てなども含めて、伝える力と言えるでしょう。
相手の言葉を「聴く力」
相手の伝えたいことを受け取る、理解する力です。相手の言葉だけで理解しきれない場合は、適宜質問や「このような理解で、あってますか?」「あなたが言いたいことは〇〇ということですか?」などと確認、質問をして情報を補完する態度も「聴く力」と捉えられます。
非言語を「伝える力」
「言語を聴く力」にも関連しますが、相手が話しやすい雰囲気を作るために、非言語でのコミュニケーションが重要となります。相手にしっかりと聴いていることを伝えるために、相手の方へ体や視線を向け、うなづいたりあいづちを打ったり、表情で反応をしたりすることです。
非言語を「読み解く力」
相手の感情や、言葉の裏に隠された本当の思いなどをくみ取るうえで重要になるのが、非言語を読み解く力です。
実は、この非言語を読み解く力が最重要スキルかもしれません。対人感受性とも言い換えられます。また、人は気持ちに寄り添った反応、対応をしてくれたり、共感をしてくれる人に信頼を寄せる傾向があるので、信頼関係を築くうえでも重要なスキルです。
言語化能力とは?
言語化能力とは、言葉にする力、つまり「頭の中で考えていることを言葉に変換し、さらにそれを相手が理解しやすい表現で伝える力」のことです。コミュニケーション能力の主軸ですね。
言語化のメリット
意見や提案が通りやすい
とても良い提案、アイデアを考えていたとしても、それが相手に伝わらないと意味がありません。正確に伝えることができれば、意見や提案が通る可能性も高まります。さらに、意図しない形で相手に伝わる(誤解される)リスクを避けることもできます。
物事を整理して考える力が身につく
頭の中で考えていることを “とりあえず” 言葉にするのは、議論をスタートする、意見表明するという点では大切ですが、それだけでは不十分です。 相手が理解しやすいように、話す内容を整理し、まとめ、簡潔な言葉で伝えることが必要です。この一連のプロセスが習慣化できれば、思考する際にも物事を整理しながら、構造化して考える癖がつきます。
自分の思考を客観的にチェックできる
言語化のメリットは、相手に正確に意見や提案を伝えることだけではありません。言葉にすることによって、自分の思考や感情を客観的に振り返ることができるメリットもあります。例えば、苛立っている時には、「自分は怒っている」という事実を冷静に受け止め、「なんで自分はこんなに怒っているんだろう」と怒りの理由を言語化し、分析していくことで、悩む状態から、解決策を考える状態へ移行することができます。
コミュニケーション能力が高い人の特徴
信頼関係を築いている
「趣味が同じ」「出身地が近い」といった共通点がある人に、親近感を覚える人も多いと思います。人は自分と共通点や類似点があるものに好感を抱きやすく、安心感を覚えやすいという傾向があります。これは「類似性の法則」とよばれるものです。この類似性の法則を利用し、相手に合わせたコミュニケーションをとる技術を「ラポールスキル」といいますが、ミラーリング:相手の動作や表情など、目に見える部分を模倣することや、ペーシング:声のボリュームやトーン、スピードを相手に合わせることを知識として知っているかどうかに関わらず、自然とできている人はコミュニケーション能力が高いと言えるでしょう。
聞く力が長けている
コミュニケーションというと、「話し方」「伝え方」のように発信側のスキルが重要だと思われがちですが、実は「聞く力」も(「聞く力」の方が?)大切です。
話を聞くことは「傾聴」とも呼ばれ、相手の話したいことを引き出すスキルとも言えます。
- 相槌や頷きで相手が話しやすい空気を作る
- 相手の話を遮らずに最後まで聞く
- 適切なタイミングで質問し、相手の言いたいことを引き出す
良いコミュニケーションをとるためには、聞き手という役割をきちんと果たし、質問したり共感したりして相手が言いたいことを引き出す「傾聴力」も重要です。これらのことを知識として知っているかどうかに関わらず、自然とできている人はコミュニケーション能力が高いと言えるでしょう。
話の組み立てが上手い
聞き手がほしいと考える重要な情報が整理された構成を表す「PREP」と言うものがあります。自分が話し手となった際に、相手に対して、分かりやすく情報を伝えるために有効な話の構成手法の1つです。
- Point:話の要点や結論を伝える
- Reason:要点や結論を挙げる理由を話す
- Example:具体例・事例、メリット・デメリットを挙げる
- Point:話の最後に、話の要点や結論を再び伝える
これらのことを知識として知っているかどうかに関わらず、自然とできている人はコミュニケーション能力が高いと言えるでしょう。特に文章によるコミュニケーションでは非言語領域が殆どないため、ここが重要になります。
コミュニケーション能力を高める
言語に関する能力は「正確に伝え、正確に受け取る」うえで重要であり、非言語に関する能力は「信頼関係を築いていく」のに重要です。苦手もしくは不足を感じるスキルから優先的に意識していき、最終的にすべてのスキルがバランスの良い状態になっていることが理想ですが、コミュニケーションは「相互作用」です。相手の状態を尊重することが重要です。
コミュニケーション能力を高めるために、コミュニケーションが苦手・不得意な人(本人の自覚というより、苦手・不得意そうに見える人)に見られる特徴ついて考えてみます。自分自身のコミュニケーションの仕方や対人関係についてふりかえる一助になると思います。
「自己中心的」になっている
コミュニケーションが苦手・不得意そうに見える人の特徴の1つに、会話が一方的で自己中心的であることがあげられます。コミュニケーションの最大の目的は、話題や気持ちなどを相互に伝えあい共有することです。一方的な発言や相手の話を途中で遮り、自分の言葉から話してしまうなど、自己中心的な言動はコミュニケーションとはいえません。
相手との距離感、間合いが合っていない
相手との距離感、間合いが不適切(多くは近すぎること?)であることは、コミュニケーションが苦手・不得意そうに見える人の特徴です。
あまり親しくない相手に親友のように話しかけられた場合、不気味に感じる(いわゆる「引く」という状態)人が多いのではないでしょうか。相手との関係性の深さに応じて距離感、間合いを測り、変えて、適切なコミュニケーションをとりたいものです。
また、物理的な距離(パーソナルスペース)を守ることも大切です。パーソナルスペースは、他人に近づかれると不快に感じる空間のことです。個体距離、対人距離とも呼ばれるそうです。 一般に女性よりも男性の方がこの空間は広いとされていますが、社会文化や民族、個人の性格やその相手によっても差があります。
「プライド」が高い、邪魔をしている
人として生きる上で、プライドは失ってはならない大切なものです。しかし、プライドが高すぎることが、良好なコミュニケーションを阻害していることもあるため注意しましょう。プライドが高いことによって、否定的な発言や他者を見下す態度が多くなり、周囲の人が徐々に離れていくことも考えられます。逆に過度にへりくだったり、称賛するような態度も同様です。自分自身の会話内容について客観的に評価し、相手を尊重した言動を心がけましょう。
見るべきは目に見えない部分
「見るべきは目に見えない部分」とは、矛盾しているかもしれませんが、目に見える部分(認知できる部分)で、人を判断したり、評価したりせず、目に見えない(認知できない)人それぞれの感情や思いなどに思いを馳せる、できれば言語化することが重要であることを言っています。
特に「教育」に関わる方、学校の先生であったり、研修の講師であったりという「仕事」ととして教育に関わる人だけでなく、少年野球のコーチ、会社の管理職(上司)、保育や介護、医療に携わる方々も同じかもしれません。「見るべきは目に見えない部分」それがコミュニケーションの本質だと思います。
投稿者プロフィール
- Sales&Promotion担当マネージャー
大学卒業後、世界的冒険教育機関であるOBSの指導者コースJALT受講、その後、OBSインストラクターへ。
EECの前身であるOECに参画、国立青少年教育振興機構「中央青少年交流の家」、市議会議員を経て現在に至る。
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