Life is Education ~先が見通せない時代、どんな “チカラ” が必要か?~

2018.03.12

お知らせ

先が見通せない時代をどう見通すのか…

 ’20年の大学入試制度改革を後押ししている言説については、前回の【特集コラム】“バレンタインデーと教育” でも触れました。2014年、オックスフォード大学のオズボーン氏は『雇用の未来』と言う論文の中で、AIやロボット技術の進化によって「今後10~20年で、アメリカのすべての雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」と発表しています。AI化が進むと、作業が減り、人間がやらなければならない仕事は減っていくと言われています。では、たとえAI化が進んだとしても「人間がやらなくてはならない仕事」、「人間にしかできない仕事」とはどのようなもので、それにはどのような力が求められ、どのような教育によってその力は身につくのでしょうか?

 前述の『雇用の未来』では、これから先もなくならない仕事として、作業療法士、ソーシャルワーカー、栄養士、内科医、外科医、教育コーディネーター、心理学者、警察や探偵、歯科医師、小学校教員などをあげています。「ロボットやコンピューターは、芸術などのクリエイティブな作業には向いていないため、創造的な仕事はなくならない」と言うのがその背景です。AIが不得意・苦手と言われているのは、未来から物事を予測したり、前例のないことをやったりなど “創造性を発揮すること” だそうです。時代を読み、人の感情を察し、相手に働きかける「ホスピタリティ」が求められる仕事は、やはりAIよりも人間の方が得意であり、人間にしかできないものだと思います。AIは、これまで蓄積された膨大なデータ(過去)から、未来を予測することはできても、この不確実な時代に新たに何かを生み出すことはできません。AI自身が未来を創造することはできないのです。未来の創造…これは人間にしかできないことです。

人生100年時代のビジネスマインド…

 去る2月28日には、経済産業省(産業人材政策室)から『人生100年時代の社会人基礎力について』がリリースされました。これは、’06年に発表された社会人基礎力(3つの能力/12の能力要素)※1に、①  何を学ぶか、② どのように学ぶか、③ どう活躍するか という3つの視点が加わったものです。特に、② どのように学ぶか という「学び方」に言及しているところが特徴的です。具体的には、リフレクション【「内省」という意味で、個人が日々の業務や現場からいったん離れて自分の積んだ経験を「振り返る」ことを指しています。過去に起こった出来事、今ここで起こっていることの真意を探り、その経験における自分のあり方を見つめ直すことで、今後同じような状況に直面したときによりよく対処するための「知」(仮説)を見出すこと】と体験・実践、多様な能力を組み合わせることだそうです。EECでは、同時期にこれまでの企業研修についてのレビュー、企業研修のブラッシュアップの機会がありました。

 EECが提供する企業研修の目的は、 “主体性” の育成です。“主体性” の育成において不可欠な要素を『Essential Mind』と呼び、全てのビジネスにおいて根幹となる、本質的な三つの姿勢と定義しています。

【本気】 真摯に向き合う姿勢
【本音】 偽らない姿勢
【本物】 より良いものを追求する姿勢

Essential Mind』が醸成されて、初めて課題発見力や課題達成力、発信力や情況把握力などのチカラ(本質的な力=Essential Skill)が身についていくのです。では、『Essential Mind』は、どのように身についていくのか?それは、体験の中で実際に行動すること、またその体験をじっくりと自分自身でリフレクションすることです。EECでは、体験プログラムを通して、『Essential Mind』育成の機会を提供していきます。

学校現場も変わり続ける…

 幼稚園の「教育要領」と小中学校の「学習指導要領」が’17年3月に改訂され、’18年度から順次移行が始まります(全面実施は小学校で’20年度、中学校で’21年度から、それまでは移行期間と位置付けられます)。今回の新要領では、小学校の外国語教育の教科化のほか、全体として「主体的・対話的で深い学び=アクティブ・ラーニング」を重視した学びの展開をめざしています。知識偏重の教育から、思考力や判断力、表現力を育む教育への大きなシフトです。文部科学省は、今回の改訂について「情報化やグローバル化によって社会が人間の予測を超えて変化する中で、新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直しをするため」と説明しています。

 その他に、IQなどでは測れない非認知能力=人間力・生きる力にも、これまで以上に注目が集まっています。非認知能力とは、例えば「問題発見能力」や「行動力」と言った言葉で表現されています。これまでは、与えられた問題を速く、正確に解く力が求められてきましたが、それはAIに敵いません。これからは、顕在化していない問題を発見し、人を巻き込みながらアイデアを形にしていく力が必要になっていくと言うことです。これは「合意形成力」と言えるでしょう。また、「多様性」、「共感力」もキーワードになっています。「共感力」では、他者に対する共感とともに、自分に対する共感も含まれています。

しなやかに、力強く…

 未来を生きる人材に求められるのは「主体的に変わり続けられること」ではないでしょうか?これまで会社、部署など組織、チームの目標が目の前に降りてきて、その目標に照らして合理的なのは何か、正解は何か(どちらか)という判断を迫られることはあっても、自分なりの価値基準、判断基準が必要となる場面や、自分自身の価値観を自身に問いかけ判断をするといった場面はほとんどなかったのではないでしょうか?しかし、これからは、決められた基準がない中で自分の価値観と他者の価値観をすり合わせ、時には折り合いをつけ、統合しながら、新しい決断や判断を下すという場面や、それまでの価値観を捨て、新たな価値観を取り入れて前に進むような場面がどんどんと押し寄せてくる…そんな時代が予測できます。そして、その時代に生きるために、これまであまり必要とされていなかったチカラが求められてくるのです。もちろん “教育” も、時代の要請に応えて、主体的に変わり続けていく必要があります。

※1 社会人基礎力(3つの能力/12の能力要素)
3
つの能力 12の能力要素 
① 考え抜く力(シンキング)     …  課題発見力、計画力、創造力
② チームで働く力(チームワーク)  …  発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力
③ 前に踏み出す力(アクション)   …  主体性、働きかけ力、実行力

投稿者プロフィール

鈴木浩之
鈴木浩之
Sales&Promotion担当マネージャー

大学卒業後、世界的冒険教育機関であるOBSの指導者コースJALT受講、その後、OBSインストラクターへ。
EECの前身であるOECに参画、国立青少年教育振興機構「中央青少年交流の家」、市議会議員を経て現在に至る。

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