Essential Report vol.5

2024.02.29

お知らせ


Essential Report とは?

企業の社員教育・人材育成、学校教育を行っている【エッセンシャルエデュケーションセンター】(以下EEC)の社内プロジェクトの成果をまとめ、それを公開するものです。 

そのプロジェクトは「Management Policy」と呼ばれています。今回は、2023年12月のプロジェクトミーティングで行った、通称「F-SWOT」(内部環境、外部環境における「事実(fact)」を中心に、内部環境の「事実」は短期・中期・長期の強み、弱みに、また外部環境の「事実」は、機会、脅威へと展開していくフレームワーク)の結果をまとめました。


内部環境分析 

AI活用方針策定

 近年、人工知能(AI)が急速に進化、普及し、様々な社会領域に影響を与えている。一部の仕事は自動化され、労働市場に大きな変化が生じた。また、新たな職種が生まれ、求められるスキルも変化している。AIの進化、普及によって、産業と雇用に与えた影響は顕著であり、新たなビジネスモデルの創出も期待されている。日常生活においては、AIの進展により情報へのアクセスが容易になり、情報格差の縮小が期待される一方で、ITリテラシーの差によっては、さらなる情報格差を生むことが懸念されている。 

 そんな中、EECでは今期、AIの活用を方針として掲げている。商品開発と業務改善にAIを徹底的に活用し、カスタマーサクセスにこだわっていく。実際の取り組みとして、これまで全て手作業で行なっていた議事録の作成を音声文字起こしツールなどを使用して自動化したり、chatGPTを用いて資料作成をしたりするなどの業務改善を進めている。また、弊社の特徴である「Essential Education®︎(本質的な教育)」での学びを促進させるために、生成AIを活用した新たなコンテンツの開発にも着手している。

 しかし、AIの導入には、従業員のスキル向上や新たな役割の創出が求められるため、人的リソースの投入が不可欠となる。現状のEECでは、AIに関する専門知識やスキルの不足が課題としてあるため、AI人材の獲得や教育に関するコストが少なからず発生することが予想される。方針策定が、費用倒れ、絵に描いた餅にならないようにするためにも、革新に挑むことを恐れず、挑戦し続ける組織でありたいと改めて思うところである。

 こうした決意、姿勢が、先行者利益を享受できる状況を生み出し、市場での存在感、EECの価値を高めることに繋がると考える。さらには、新たな展開を考えることが、従来のサービスの価値を改めて考えるきっかけとなり、EECとしての普遍的な価値を見出すことにも今後繋がっていくのではないかと考える。

中堅・中小企業の実績が増加傾向

 EECは、学校教育から企業の人材育成まで、幅広くサービスを提供している。企業においては、内定者から幹部役員、経営層まで、それぞれの立場や階層に応じた研修を行なっている。これまでの研修実績をふりかえると、ベンチャー企業から社員数1,000人を超える大手企業まで、クライアントの規模もバラエティに富む。

 ここ最近、大手企業だけでなく、中堅・中小企業の研修実績が増加傾向にある。中小企業ならではの繋がりやネットワーク、口コミなどにより、受注ハードルが下がり、案件化しやすいことがその要因であろう。

 中堅・中小企業の実績が増えることは、大きなアピールポイントになり得る。大手企業は、取引先として中堅・中小企業と密接に関わっている部分もあるため、中堅・中小企業の現状や動向を知ることは有益であると言える。大手企業から中堅・中小企業まで、幅広い研修実績を持つこと、それによって得られる情報はEECの強みであり、アピールポイントになると考える。 

 一方で、大手企業から中堅・中小企業の比率が高まることは、一度に提供するサービスの量(研修対象者の人数)の減少にも繋がり、それだけ案件数を増やす必要が出てくるため、スタッフ一人当たりの業務ボリュームも大きくなる。これに伴い、新規顧客の獲得が急務となり、マーケティング戦略の見直しも必要となってくるだろう。

 企業同士の連携強化など、新しい事業の展開も視野に、単なる変化への対応にとどまらず、積極的なビジネス展開への可能性を考えながら、歩み続けたい。

外部環境分析

大阪府高校授業料無償化

 2024年度から大阪府の高校の授業料無償化が段階的に開始される。文字通り、府内に住むすべての高校生の授業料を無償にする制度である。大阪府は大阪以外の近畿1府4県の私立高校に通う約8300人も対象に含めたい意向を示し、2026年の完全無償化に向けて動いている。

(出典:2023-12-29.読売新聞オンライン“大阪の私立高無償化、進学希望先が偏る懸念も…不公平感の解消が課題”)

 授業料の無償化は教育の機会均等を促進し、家庭の経済的な負担を軽減することが期待される。家庭の経済的に状況に関わらず、選択の幅が広がるという利点がある。 

 一方で、私立学校の中には、定められた授業料の上限額を超える学校も多く存在し、大阪府から通う生徒と大阪府外から通う生徒、府外の学校に通う大阪府民と府民以外の生徒との間で授業料に差が生まれることとなり、定められた授業料の上限額を超える部分や授業料以外の財源の負担割合を含め、どう確保するかが課題となるであろう。各学校が設ける入学金や施設整備費などで負担を求めるにも限度があり、各学校の特色ある教育が失われることが懸念される。さらに、公立学校が新たな競争に晒され、限られた予算の中でソフト、ハード両面で質の向上が求められることとなる。少子化も相まって、公立学校の生徒確保はこれまで以上に厳しくなり、廃止・合併を含め、再編が加速するであろう。

 関西に拠点を構え、関西圏の私立学校と関わりが深いEECとしては、今回の授業料無償化による影響は少なからずあるだろう。前述したように大阪府の私立学校としては、無償化に伴って財源の確保が課題となり、経費削減の動きが強まることが予想される。それにより、これまでの学校クライアントの失注や新規クライアント獲得困難も予想される。

 EECとしても市場の情勢変化に対応するため、新しいビジネスモデルを構築し、将来の展開を見据える必要がある。私立学校に限ったことではないが、これまで以上に生徒募集のため、差別化を図る必要性も出てくるであろう。今回の授業料無償化を生徒募集の観点でのサポートをするような新たなサービスを考えるきっかけとしたい。また、家庭の負担は実質減少するため、学校だけではなく、各家庭毎に教育の機会を選択できるような募集型のプログラムの拡充など、BtoBだけではなく、BtoCの観点でもサービスを提供することができるように思案していきたい。

ポケットOJT~sakidori~®︎など新たな学習ツールの台頭

 On-the-Job Training(以下OJT)とは、実務現場での実地研修を指す言葉である。通常、新入社員が職場で必要なスキルや知識を獲得するために行われる。理論や教室での学習とは対照的で、実際の業務環境で実践的なスキルを身につけることを目的として行われることが特徴である。OJTの中で培われる力は、業務に直結する専門的なスキルだけではない。実務での経験を通じて、様々な問題や課題に直面し対応する中で、課題解決能力を身につけたり、チームや上司との連携過程やクライアントとの対話などからコミュニケーションスキルを身につけたり、社会人として必要なスキルの獲得も期待される。

 新型コロナウイルスの影響も相まって、急速なデジタル化、それに伴う事業の高速化、生産年齢人口の減少による慢性的な労働力不足などを背景に、若手社員の「早期活躍」が求められている。このような状況から、OJTでの学びを支援する新たなツールも生まれている。マイナビ研修サービスは、2023年9月より、若手社員に共通する「能力」と「経験」をゲーム感覚で学び、早期から活躍する若手社員の育成を支援する新サービス『ポケットOJT~sakidori~®︎』の提供を開始した。

(出典:2023-9-1.株式会社マイナビ“マイナビ研修サービス、Z世代に向けたOJT支援システム『ポケットOJT~sakidori~』を9月1日より提供開始”)

 『ポケットOJT~sakidori~®』は、活躍する若手社員に共通する「能力」と「経験」をゲーム感覚で学ぶ学習フローが搭載されており、通常7年かけて習得する「能力」と「経験」を11週間で学ぶことができるというものである。

 弊社は企業研修において、前述したような社会人に必要なスキルをオフラインでの研修の中で学ぶスタイルを強みとしているが、昨今の社会情勢に伴うデジタル化、生成AIの台頭など、教育現場における学び方は多様化しており、提供するサービスの形態も多様化してきている。企業においては、これまで外注していた社員教育をポケットOJTのようなツールを使って自社で行うようになったり、時間も手間もかかる集合、対面での研修が敬遠されるようになったりすることも予想される。オフラインでの研修を強みとするEECとしては新規競合の台頭、市場シェアの侵食という脅威が迫っていることも事実である。

 このような状況の中では今後、敏感に市場の変化に対応し、継続的な研究開発活動を行いつつ、顧客ニーズに合わせた効果的な教育プログラムを提供することが求められる。現在、弊社の特徴である「Essential Education®︎(本質的な教育)」での学びを促進させるために、生成AIを活用した新たなコンテンツの開発に着手している。今期からAIの活用を方針として掲げているように、従来のコンテンツに頼るだけでなく、時代の変化を先取りし、私たちも変化し続けることが重要であると考える。

2024年2月10日 名越由佳

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